日本中の中小企業に対してM&A仲介会社から営業という名の迷惑電話が掛かりまくっております。手紙もたくさん届いています。
くれぐれもこういった会社に依頼しないように気をつけてください。それとあまりにしつこいようなら然るべき窓口に通報しましょう。
少しずつではありますが、苦情の効果が出始めているような空気があります。
なぜM&A仲介会社はしつこく電話をしてくるのか?
なぜM&A仲介会社はしつこく「会社を売ってください」と迷惑電話をしてくるのでしょうか?
営業というのは一般的に「買ってください」とお願いするものですから、M&A仲介会社が「売ってください」というのは不思議に思うかもしれません。
これには中小企業のM&A業界の特殊な事情が関係しています。
世の中にある中小企業の中で、「買いたい会社」と「売りたい会社」のどちらが多いかは分かりません。しかし「良い会社があれば買収したい」と宣言する経営者と「買ってくれる会社があれば売却したい」と宣言する経営者では、圧倒的に前者が多いです。
会社を売るということに対して、社員を裏切るような感覚を持ってしまう経営者もいますし、売却を検討していることが知られると社員や取引先に心配されてしまう可能性もありますから、売りたいと思っていても、それを表明することは少ないのです。
また、M&A仲介会社に「売りたい」と相談に来た中で、実際に売れる可能性のある会社というのは2~4割程度なのです。そしてその売れる会社でも、実際にM&Aが成立するのは半分程度なのです。(詳しくは「M&Aの成約率!「売り」は5割、「買い」は1割。そもそも売れる会社の割合は何割か?」を参照してください)
つまり、中小企業のM&A市場というのは異常なほど、売り手の少ないところなのです。そのため、M&A仲介会社は必死で売れる会社を探すために電話をしたり、手紙を送ってくるのです。中には法人の登記情報から調べた社長の自宅に連絡してくる会社もあります。
それから、M&A仲介会社の社員の給料は成果報酬型になっています。成約させて得た手数料の20%~30%前後がインセンティブとして支払われます。基本給が安く抑えられていることも多いのでインセンティブを得なければ高額報酬は望めませんし、ノルマもありますから一日中、売れる会社を求めて迷惑電話を掛けまくるのです。
M&A仲介協会の苦情相談窓口
M&A仲介会社は何度断ってもしつこく電話をしてきます。業務が滞って迷惑ですね。しかも、言葉遣いが偉そうだったり、ガチャ切りしたりと、態度の悪いことが多いです。ハッキリ言えばムカつくと思います。
そんなとき、どこに苦情をいえば良いのでしょうか?
まず、M&A仲介協会(※1)に加盟しているところであれば、そちらに通報するという方法があります。ウェブサイト上に以下のように記載されています
営業行為(訪問、電話、電子メール等)を受けられた方などからの苦情についても、ご相談をお受けしております。
苦情相談窓口のページから通報できるようになっています。
(※1 M&A仲介協会:公正で円滑なM&A取引を推進し、M&A仲介業界の健全な発展に取り組むことを目的に2021年10月に設立された。日本M&Aセンターや、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクなどの大手が加盟)
中小企業庁の情報提供受付窓口への苦情の効果
とはいえ業自主規制団体ですから、迷惑電話を辞めさせる強制力まではありません。通報しても効果がない可能性もあります。
そんな時は中小企業庁へ通報しましょう。M&A支援機関登録制度に登録されたFA・仲介業者による問題行為の報告を受け付けています。「M&Aでのトラブルについて、お知らせください」というページに情報提供受付窓口の連絡先が記載されていました。
M&A支援機関登録事務局内 情報提供受付窓口
Eメール:jouhouteikyou@ma-shienkikan.go.jp
TEL:03-4577-6532
受付時間:平日 10:00~17:00
ちなみに、よほど苦情が多かったのか、各M&A仲介会社に連絡が入り、苦情が多いところには直接注意をする旨と、追加の措置(おそらく登録取消や停止)を行う可能性があることを通知したそうです。
皆さんの苦情の効果が実ったといえるでしょう。中小企業庁はM&A仲介業界の現状に対し、かなりの問題意識を持っているようで今後、規制が強化される可能性は非常に高いと思います。あくまで私の個人的な意見ですが、数年のうちに営業方法と双方代理について何らかの条件が加わるのではないかと思います。
M&A仲介会社のしつこい営業が日本をダメにしている
ちょっとここからはM&A仲介会社の営業についての私の個人的な意見を書きたいと思います。
M&A仲介会社の存在意義というのは、後継者不在や成長鈍化で悩む企業を助けることです。正しい業界再編を行い生産性を高めることで人口減少による日本経済の再生を果たす役目も持っています。
しかし、現状のM&A仲介会社のしつこい営業スタイルはこれに逆行しています。
M&A仲介会社が中小企業の生産性を落とす
例えば60分で終わる仕事があるとします。この仕事を開始して30分経過したときに、ちょうどM&A仲介会社から営業電話が掛かってきたとします。すぐに断れば数十秒で済むでしょう。
ではこの仕事はあと30分で終わるのでしょうか?実は終わらないのです。なぜなら、どこまで進めていたかを確認する時間が発生しますし、電話によって途切れた集中力を戻すにはさらに時間が掛かるからです。
しかも、さきほども説明した通り、迷惑電話を掛けてくるM&A仲介会社の社員は礼儀知らずで態度の悪い人間が多いです。実は人間の脳は失礼な相手に対応した後で気持ちを切り替えるとき、想像以上の認知リソースを消費します。これによって仕事に向けるべきリソースが減りパフォーマンスが低下することが様々な心理学実験によって証明されています。
つまり、偉そうに「私たちは中小企業の発展のために全力を尽くします」みたいなことを言っているM&A仲介会社が実は最も発展を阻害しているのです。こんなことをしていて良いのでしょうか?
迷惑を掛けるために生きている
このように、M&A仲介会社の営業電話は中小企業に多大な迷惑を掛けているだけですから9割以上断られます。それでも一日中電話をし続けるのです。ここにとんでもない事実が隠されていることをご存じでしょうか?
実は一日中迷惑電話を掛けて9割断られるということは、活動時間の約9割を他社に迷惑を掛けることに使っているということです。もはや迷惑を掛けるために生きていると言っても過言ではないのです。
社員にそんなことをさせている会社ってどうなのでしょうか?もはや反社ですよ。親が知ったら泣いちゃいますよ!
ということでM&A仲介会社を選ぶ際には、しつこい迷惑電話を掛けてくる会社に頼まないように気を付けましょう。