常に経営のことを考えていると、夢にまで出てくることがあります。
「夢の中でも仕事をしているよ」という経営者もいます。
それが良い夢なら楽しいですが、悪夢を見てしまうこともあります。起きた後にその恐怖が残っていることもあります。
悪夢の中でも自分の会社が潰れる夢を見るという経営者は多いです。
私のクライアントからもそういったエピソードを聞くことがあります。
そして、それが何かの前兆ではないかと不安になってしまう人もいます。
確かに、会社が潰れそうな状況であれば、普段からそのようなことを考えますから、その記憶の断片が睡眠中に夢として出ている可能性はあります。
しかし、経営が上手くいっているときでも、会社が潰れる夢を見る可能性はあります。
そのような場合には、現実で最悪な状況になったとき対処できるよう、事前に夢でトレーニングをしていると考えると、ポジティブに捉えることができます。
脳を観察する実験でも、悪夢によってトレーニング効果が生じることが分かっています。
悪夢によるシミュレーション
なぜ夢を見るのか、科学的にハッキリとした理由は特定されていません。
記憶を整理するためだとか、昼間の現実と空想の仕分けをするためなどと言われることがあります。
心理学者のジークムント・フロイトは、夢には潜在意識の願望が形を変えて現れると言いました。
今も夢の内容からその人の奥底にある感情を読み取ろうとする実験を行っている人もいます。
夢にも色々とありますが悪夢については現実で恐ろしいことが起こったときに対処できるようにするために見ているのかもしれません。
事前に脳内で反応させておくことで慣らしておくのです。シミュレーションをして訓練しているようなものです。
つまり、会社が潰れる夢というのは、経営者としての自分を鍛え、修羅場に対処できるようになるために見ているのかもしれません。
夢と脳の実験
ジュネーブ大学のギヨーム・ルジャンドル博士らの研究グループは夢が脳に及ぼす影響についての実験を行いました。
被験者を睡眠中に何度か起こし、どのような夢を見たか質問しました。
その結果、夢の内容によって脳内で反応する場所に差があることが分かりました。
怖い夢を見たときに活性化するのは感情の評価に関わる島皮質と、危機に直面したときに体の準備をさせる前帯状皮質でした。
つまり、寝ているときも起きているときも恐怖に直面したときに反応する部分は同じということです。
怖い夢を見ることが現実への対処法となる
別の実験では被験者に一週間に渡って夢と感情についての記録をつけてもらいました。
その後で「ネガティブな写真」と「普通の写真」を見せどのように脳が反応するかを観察しました。
その結果、怖い夢を長く見た人ほどネガティブな写真を見たときの感情に関連する脳部位の反応が小さいことが分かりました。
また感情に強く関連する扁桃体の働きを抑制する前頭全皮質は活性化されました。
つまり、ビビらなかったということです。
これらの実験から怖い夢を見ることで現実にそのようなことが起こったときに脳が対処できるようになるということが分かります。
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会社が潰れる夢は新しいことにシャレンジしたいという願望?
怖い夢を見ることでシミュレーションを行っているとしてもそれがなぜ起こっているのかは不明です。
現実で何か起こりそうな状況だからなのか、定期的なメンテナンスのようなものかは分からないのです。トラウマの影響なども考えられます。
どんな理由にせよ悪夢が現実の大変な状況に脳を慣れさせる効果があるという結果は出ています。
これは心が壊れないためにも大切な機能と言えるでしょう。
しかし慣れることによって現実の悪循環から抜け出せなくなってしまっては問題です。感情の対処が出来たとしても幸福にはなれないのです。
怖い夢によって対応力をつけた脳はより良い人生のために使わなければなりません。
余談ですが自分が死ぬ夢は新しい自分に生まれ変わりたいという潜在意識の表れと分析されることもあります。創造的破壊です。
会社が潰れる夢も、新しいことにチャレンジするために、会社を生まれ変わらせたいという願望の表れかもしれません。
参考文献:Guillaume Legendre, Laurence Bayer, Margitta Seeck, Laurent Spinelli, Sophie Schwartz, Virginie Sterpenich. Reinstatement of emotional associations during human sleep: an intracranial EEG study.