グローバルリーダーに必要な「下向きの敬意」とは

日本でもグローバルリーダーという言葉を聞く機会が増えてきました。

広い意味でのグローバルリーダーとは国や文化を跨いで活躍する人材のことです。

企業においては複数の国や地域の事業を担当する幹部を指すことが多いです。

ビジネスの国境がなくなった現代においては、中小企業であってもグローバルリーダーの育成は急務といえます。クロスボーダーなM&Aによって、海外に子会社を持つこともあり得ますからね。

とはいえ誰もがその条件を備えているわけではありません。

中にはグローバルリーダーは育成できるものではなく生まれ持ったものだという人もいます。

誰を抜擢するかによって海外事業の成否が変わってくることもあるでしょう。

ではグローバルリーダーに必要な条件とは何でしょうか?

一つ挙げるとしたらそれは自分を低い場所に置く習慣を持っていることです。

「下向きの敬意」とグローバルリーダーの成果

自分を低い場所に置く習慣とは組織内で下の立場にいる人間と対等になるということです。これを「Downward Deference:下向きの敬意」といいます。

ハーバード・ビジネス・スクールのセダール・ニーリー教授たちが行った研究があります。この研究では米国の大企業の115人のグローバルリーダーがどのように下向きの敬意を行使しているかを調べました。

そこから分かったこととして、グローバルリーダーはまず現地の部下との距離を縮めることに尽力するということです。そのために協力し信頼を得るための行動をします。

また部下の専門性を尊重しその判断を優先するということも分かりました。現地のことはそこの人間のほうが理解している、という謙虚さを持っているということです。

☑︎M&Aが企業にオープンイノベーションをもたらすパターン

グローバルリーダーは育成できるのか?

上記のような下向きの敬意を実践しているグローバルリーダーはそれをしていないグローバルリーダーと比べて仕事の成果が高く出世しやすいことも分かっています。

社員が下向きの敬意を持っているかどうかはローカルな場でも確認することができます。普段から部下や現場の意見に耳を傾けているか、協力会社の立場も考慮して業務を遂行しているかといった点から判断すれば良いのです。

ではこのような資質は生まれつきのものなのでしょうか?後天的には身につかないのでしょうか?

ニーリー教授らの研究では外国での滞在期間や異なる文化に触れた経験と下向きの敬意を行使するかには相関関係があるということも分かっています。

つまり成功するグローバルリーダーとなる資質は環境や教育によって身につけられる可能性があるということです。

参考文献:Tsedal Neeley and B. Sebastian Reiche. 2020. How Global Leaders Gain Power through Downward Deference and Reduction of Social Distance. Academy of Management JournalVol. 65, No.1