数字に弱い経営者、10%割引と10%増量の違いが分かるか?

売上がイマイチなのでセールかキャンペーンでもしようかと考えます。

10%割引するか、10%増量するか。どっちが良いでしょう?

どちらも10%の損なのだからイメージの問題でしょ?と思った経営者は数字に弱いかもしれません。

10%増量は約9.1%の割引と同じ

売手側の視点で見れば、10%割引と10%増量では後者の方が得です。

例えば1,000円(内容量100g)の商品があったとします。

10%割引ということは100gを900円で売るということです。

10%増量では110gを1,000円で売るということであり、100gあたりに換算すると909円となります。

式:(1,000÷110)× 100 = 909.0909…

10%増量は約9.1%の割引と同じなのです。

商品は不良在庫になるが現金はならない

買手から見れば割引のほうが得なのだから、損してでも割引のほうが売れ行きが良くなると思うかもしれません。

確かに商品や顧客層によってはそうかもしれません。

しかし、10%増量の商品を見て、「10%割引にする選択肢は検討しなかったのか?」と考える人は滅多にいません。

なので増量のほうが良いと思います。

それに商品は不良在庫になりますが、現金はいくらあっても不良在庫にならないのです。現金より商品を減らしましょう。

スタンプカードでリピート率が高まる理由

扱っている商品によっては増量が難しいかもしれません。

元からパッケージングされていたり、エステのように施術時間や内容を変えにくい業種もあります。

そんなときは10個買ったら1個無料や10回通ったら1回無料などにすれば良いです。

この場合も「だったら無料にする分を割引しろ」と思う人は少ないです。

またスタンプカードを作らせることで、途中でやめるのが勿体ないという心理が生じやすくなるので、リピート率が高まります。

サンクコスト効果が発生するからです。

特にエステや美容室においては、他店を検討しても「あと3回通ったら無料だし、ここでやめたら今まで支払った分がもったいない」と思ってくれやすいのです。

50%値下がりした株の損失を取り戻すには?

あなたが数字に弱いか確かめられる問題があります。

次の問題が分かるでしょうか?

【問題】
あなたの投資した株が市場の変動によって50%下がったとします。
この損失を取り戻すには何%値上がりすれば良いでしょうか?

簡単に分かる問題だと思います。

それでも「50%」と答えてしまった人がいるかもしれません。

正解は100%です。

金額に置き換えてみれば簡単に分かります。

100万円が50%下がったら50万円です。

この50万円を100万円に戻すには100%の値上がりが必要です。

50%の値上がりでは75万円にしかなりません。

数学が苦手だと投資で騙される

イギリス・スターリング大学の研究によると、多くの人間が上記のような問題を間違えるそうです。

こういった問題を間違う人間は金融機関に騙されて手数料が高いだけでパフォーマンスの悪い商品を買わされるので注意しましょう。

また薦められて買った投資信託などの金融商品が実際には価値が下がっているにも関わらず、巧みな誤魔化しによって騙されることもあります。

個人的に投資で失敗しても良いですが、経営者が会社の投資で失敗したら大変なことになります。

投資に関する人間心理でいうと、一度でも大きく値上がりした資産はその後に値下がりしても価値があるように感じてしまう錯覚もあるので気をつけましょう。

儲けたいという欲望が冷静な判断能力を失わせる可能性もあります。

☑︎経営者は孤独なので占い師に騙される。特に不安を感じているときは要注意

数字に弱い経営者は頭が悪いのか?

経験から言わせてもらうと数字が苦手な経営者は頭が悪いのではなく、単に学生時代に数学をサボりすぎただけのパターンが多い気がします。

数字が理解できないのではなく、数学的に分析しようと思わないのです。

つまり出てきた数字をそのまま受け入れてしまっているだけなので、訓練次第でいくらでも改善できると思います。

冷静な判断力を持つためにも数学を復習したほうが良いかもしれません。

参考文献:Philip W. S. Newall. (2016). Downside financial risk is misunderstood.